接骨院等にかかるとき
ねんざや打撲の際、接骨院(整骨院)を利用する場合もあるでしょう。しかし、接骨院等は保険医療機関ではなく、施術を行う柔道整復師も医師ではないため、健康保険でかかれるのはごく限られた範囲に限られます。
接骨院等の正しいかかり方
健康保険法に基づき健康保険組合が交付した「保険証」は、病院・医院等の保険
医療機関に提示することにより、医師法の適用を受けた医師が行う診療について保険診療として自由に受診することができます。一方で、病院等の医師ではない柔道整復師が行う接骨院等での施術(柔道整復師が行うものは治療ではなく施術といいます)については、限定された条件で行われる施術以外は、健康保険法では保険診療の扱いとして認められていません。
近年、接骨院等が身近なものとなり、多くの人が気軽に利用できるようになりましたが、その反面、健康保険適用外の請求が年々増加しています。
このため、健康保険組合には施術を受けた方に対して、施術内容の確認や指導を徹底するよう、厚生労働省より通知されています。この通知に従い、当健康保険組合では正しい施術を受けていただくため、電話や文書により照会を行い、アドバイスや指導を行っています(照会状発送等業務委託会社/(株)大正オーディット)。
皆さんが施術を受けると、保険適用分(自己負担額を除いた施術費用)が月単位で翌月以降に健康保険組合に請求され、健康保険組合は療養費としてその翌月以降に接骨院等へ支払うことになります。この間、当健康保険組合では、施術費の請求内容等の審査を下記の条件に照らし合わせて行っています。審査の結果、柔道整復師から保険診療になると説明を受けた施術であっても、保険対象外と判定される場合があります。その場合、施術費用は全額加入者の支払いとなり、施術を受けた数ヵ月後に当該接骨院等より保険適用時の自己負担分以外の残額の支払いが請求されることになりますが、自費(10割負担)での施術または他の様々な療法を自由に受けることを妨げるものではありません。
健康保険適否の判断条件
当健康保険組合では、下記5条件に照らし合わせて総合的に健康保険の適否を判断します(接骨院等においては、下記(2)の条件のみで適否を判断)。
- (1)健康保険法による原則
- ①保険適用の傷病治療は、医師法の適用を受けた医師による病院・医院等の保険医療機関で診療を受けることが原則である(健康保険法第63条)。
- ②やむをえない事情があり、保険者(健康保険組合)がその必要性を認めた場合に限り、上記医師以外の者からの診療・施術等について、保険適用の療養費の支給を行うことができる(健康保険法第87条)。
- (2)厚生労働省通知による保険適用条件
- 外傷性であることが明らかな、捻挫・打撲・挫傷(肉離れ)・骨折/脱臼(応急処置以外は医師の同意が必要)
- *いつ・どこで・何をしているときに、どの部位を打った(捻[ひね]った・伸ばした等)の負傷原因が明確なもの
- 【注】外傷性のけがで医療機関若しくは整骨院(接骨院)で一定の期間、診療や施術を受けた後に残る痛みや繰り返される痛み(症状の改善しない慢性化した痛み)の症状に対し整骨院(接骨院)で施術を受けた場合には、健康保険は適用されません。
こんな場合は健康保険の適用外です!
- case
1 - スポーツ前後のケアやケガの予防に接骨院に通っている。施術を受けながら練習に参加したり、大会等に出場している。
スポーツによる筋肉痛・筋肉疲労、ケガの予防やケアのために健康保険は使えません(施術を受けながらスポーツを継続している場合を含む)- case
2 - 家の中の片づけに精を出したら腰が痛くなり、接骨院で施術を受けた
日常生活で起こる、または加齢等により起こる「原因のはっきりしない」首・肩・腰・膝等の痛みなどに健康保険は使えません- case
3 - 以前痛めた膝がまた痛み出したので接骨院にかかっている
過去のケガ、交通事故の後遺症などは健康保険の対象となりません- case
4 - 神経痛、リウマチ、肩こり、五十肩、頚椎症、ヘルニア、関節炎などの痛みが出ると接骨院で施術を受けている
本来は医療機関で治療すべき病気(症状)や、ケガをした部位に起因する他部位の痛みなどへの施術に健康保険は使えません- case
5 - 数ヵ月前に痛めた腰が完治しないので、今後もずっと施術を継続したい
症状が改善しない長期にわたる漠然とした施術や慢性化した症状(慢性腰痛等)には健康保険は使えません- case
6 - 病院で治療中のケガの施術を接骨院でもしている
医療機関と重複受診している場合は、健康保険は使えません下記のような施術の受け方については、厚生労働省よりとくに事実確認および精査を行うよう強く求められています
- 症状改善が見られない長期(概ね3ヵ月を超える継続的・断続的期間)の施術
- 施術を受ける部位を次々と変えたり、施術院を変えての長期間にわたる施術、3ヵ所以上の多部位の施術、概ね1ヵ月10回以上の頻回の施術
- (3)接骨院等で施術を受けた者の施術前の整形外科等の専門医療機関での診療履歴およびこれまでの接骨院等での施術履歴
- (4)施術を受けた者への文書・電話等での照会に対する回答内容
- (5)(審査状況により)整形外科医等の医師の意見書
- *業務上や通勤途上での負傷の場合は、健康保険の適用ではなく、労災保険の取り扱いになります。速やかに事業主(会社)へ届け出てその指示に従ってください。
- *交通事故などの第三者が関わる負傷の場合は「第三者の行為による傷病届」を健康保険組合へ提出するか、あらかじめ連絡をした後、健康保険被保険者証を使用してください。
スポーツ外傷とスポーツ障害
日常的にスポーツを行っている方にスポーツ障害が増加しています。
- ①スポーツ外傷…1回の急激な外力が作用して身体を傷つけるもの(捻挫・打撲・脱臼・肉離れ・骨折など)
- ②スポーツ障害…慢性的に大小様々な外力が繰り返しかかり、その結果として身体を傷つけるもの(成長痛・テニス/ゴルフ肘・ジャンパー/ランナー膝・野球肘(肩)・その他同じ部位に慢性的に繰り返し発症する痛み・しびれなど)
スポーツ外傷に対する施術は健康保険の対象となりますが、スポーツ障害は慢性化した状態ですので接骨院等での施術に対して健康保険は適用されません。最近では幼少期より日常的にスポーツをする方が多くなり、特に骨の成長期の若年者にスポーツ障害が増えていますので注意してください(スポーツ障害の診断は専門の整形外科医が行いますので、早期の段階での診療を推奨します)。なお、練習参加や大会参加を優先し、一時的な症状緩和や悪化予防のために施術を受けることにも健康保険は適用されません。
施術内容は必ずチェックを
接骨院等での施術費用は、原則としていったん患者が全額を負担し、事後に健康保険組合に申請して7割分の還付を受ける「療養費」の取り扱いとなります。しかし、利便性が考慮された結果、都道府県との協定を結んでいる接骨院等では、療養費の支給申請を柔道整復師に委任することができるようになり、保険医療機関と同様、原則3割の自己負担のみで施術を受けられるしくみになっています。
しかし、委任するとはいえ、「療養費支給申請書」には患者本人の自筆による署名が必要です。これらを求められた際は、負傷原因や負傷部位等、記載事項に間違いがないか必ずご確認ください(白紙委任には応じないでください)。
領収書を必ずもらおう
接骨院等は、領収書の無料発行が義務づけられています。医療機関にかかった際と同様に、領収書は必ずもらっておきましょう。
事後の施術内容の確認にも使えますので、施術内容の内容ごとに金額が細かく書かれた明細書ももらっておくとより望ましいですが、明細書の発行は有料の場合もあります。
「接骨院等(柔道整復師)の受療についての照会にご協力ください!」
当健康保険組合では、健康保険事務センター((株)大正オーディット)と業務委託契約し柔道整復師の医療費適正化に取り組んでいます。
接骨院等では「柔道整復師」とよばれる専門職が施術していますが、病院ではありませんので健康保険が使える場合と、使えない場合があります。
そこで、正しい受療方法をご理解いただくともに、柔道整復師から健康保険組合への請求内容の点検を行い、受療された施術内容などについて郵便または電話にて照会確認をさせていただいております。
そのため、柔道整復師にかかられた場合は、負傷部位や施術内容のメモをとり、領収書と一緒に保管しておき、照会がありましたら、正確に回答書にご記入されるようご協力をお願いいたします。(照会の時期は受療日から数ヵ月後となります)
この照会は個人情報保護法をふまえた専門の業者に委託して行っており、目的外利用や皆さまに代金等を請求することはありません。 - 外傷性であることが明らかな、捻挫・打撲・挫傷(肉離れ)・骨折/脱臼(応急処置以外は医師の同意が必要)